泌尿器科にかかっている方の症状で多いのは、男性では前立腺肥大と前立腺炎、女性では膀胱炎と尿失禁です。男性に多い悩みは、「尿の出が悪い」「夜間に何度もトイレに行く」、女性の場合は「下腹部に刺すような痛みがある」「少しでも下腹部に力を入れると尿が漏れてしまう」というものです。
ここで興味深いのは、症状の傾向です。都市部、農村部にかかわらず割合はほとんど同じですが、女性の尿失禁だけは、都市部と比べて農村部のほうがかなり多いのです。その理由は2つ。ひとつは農村部のほうが多産の傾向にあること、もうひとつは重いものを持つ仕事が多いことです。
最近、尿失禁・尿漏れで悩む女性が増えています。症状の重さによりさまざまですが、一番多い悩みは、お腹に力を入れたときに起きる「腹圧性尿失禁」です。咳やくしゃみ、大笑いしたとき、または重い荷物を持ち上げただけで漏れてしまうことがあるのです。
腹圧性尿失禁は、「骨盤底筋体操」で改善できることがあります。骨盤底筋体操は簡単な体操で、膀胱や尿道を支えている筋肉を鍛えたり、収縮の訓練をしたりする体操です。毎日続けることが大切で、だいたい2~3ヶ月で効果を実感することができます。
具体的には、尿道、膣、肛門とつながっている筋肉(括約筋)を締めたり縮めたりする動作を、毎日10~15分繰り返すだけです。左手をおへその下あたりにあてて、右手の指先で膣や肛門に触れて両方が締まるようにしてみましょう。この体操を続けると、括約筋が鍛えられて尿漏れの改善が見られるケースが多いようです。ただし、重度の場合、体操だけで改善することは難しいので手術をおすすめします。
近年、35%もの女性が悩んでいる尿失禁。実に女性の3人に1人以上です。男性よりも女性に尿漏れが多い理由は、
- (1)男性より尿道が短い上に、骨盤が広く骨盤底が柔軟な構造である
- (2)妊娠・出産で尿道を締めている骨盤底の筋肉が弱くなり、膀胱や尿道が下がったり、周囲の神経が傷付きやすくなったりする
- (3)膀胱や尿道の働きはエストロゲンの影響を受けているため、閉経すると症状がすすんでしまう
などが挙げられます。
これらの理由で、年齢を増すごとに「腹圧性尿失禁」というお腹に力を入れたときに起こる尿失禁が増加しています。また、3人以上の出産をしている方、難産や出産時の胎児が大きかった方、太っている方や背の高い方もかかりやすいようです。
日本では単なる老化現象として軽視されてきた尿失禁。しかし近年、欧米では女性の生活の質の向上という視点から、積極的に治療する体制が整いつつあります。最近では、女性専門の尿失禁外来を設けている病院も増加しているそうです。